日本では住宅ローンを組んで家を買うのが当たり前・・・みたいな風潮がありますが、実際には楽々と住宅ローンを組める人ばかりではありません。
なんだかんだ言っても、大金を借りるわけですから審査はありますし、審査も簡単なものではないので落ちる人もたくさんいます。
住宅ローンを組むまでには色々な壁があるのです。
そうした壁の1つに年齢の壁があります。
今回は、この年齢の壁を超える手段の1つである親子リレー返済の話です。
超分かりやすくというと親子二代住宅ローンを返すという仕組みです。
この親子リレー返済のメリットやデメリット、おすすめの銀行などを紹介します。
目次
親子リレー返済とは?
まずは親子リレー返済の概要からいきましょう。
戸建やマンションなどの物件に対して、住宅ローンを契約した本人が一定額を返済した後、後継者が残りを返済することができるものを「親子リレー返済」と言います(呼び方は銀行によって異なる)。
よくあるパターンは二世帯住宅です。しばらくは父親がローンの返済をして、その後は残りを子供が返済するという使い方になります。
2人がそれぞれ同時にローンを組んで半分ずつ返済するのではなく、ローン自体は1つで時間で区切って2人で返済していくような形になります。
文字通り住宅ローンというバトンをリレーしていく返済方式ってことです。
親子リレー返済のメリット
それではこの親子リレー返済にはどんなメリットがあるのでしょうか?
順番に見ていきましょう。
高齢でも住宅ローンを組むことができる
まずは年齢問題の解消です。
住宅ローンというのは、契約時の年齢や、完済時の年齢に制限があります。
例えば、三菱東京UFJ銀行の場合は「年齢が借入時に20歳以上70歳の誕生日まで、完済時に80歳の誕生日まで」となっています。
あまり多くはないと思いますが、60歳から住宅ローンを組む場合には完済が80歳になるので最大でも20年しかローンを組むことができません。
しかも、これはあくまで「最大で」という条件なので、実際に80歳までを認めてもらえるとは限りません。
ところが、親子リレー返済だと話は変わります。
親子リレー返済の場合は、親の払う期間と子供が払う期間がありますので、二人の年齢を合わせて考えることになります。
例えば、父親が60歳で子供が25歳だった場合に、父親が10年しかローンが組めなくても、子供が25年ローンを組むことができるので、合計で35年のローンを組むことができます。
このように、普通は住宅ローンを組みにくい年齢であってもローンを組むことができます。
借入金額を増やすことができる
次に借入金額です。
住宅ローンで借りることのできるお金というのは、契約する人の年収などによって決まります。
親子リレー返済の場合は、親と子供の二人の年収を合わせた金額で計算されるので、より多くの金額で住宅ローンを組むことが可能です。
言い換えれば、より良い物件を買うことができるようになるということです。
基本的に多額のローンを組むことはお勧めしませんが、低金利の時にはローンを組んだ方がお得になる場合もあるので、検討する余地はあると思います。
毎月の返済金額を減らせる
最後が返済金額です。
高齢になってから住宅を購入する場合は、ある程度貯金がある人もいると思います。そういう場合はリレー返済にしなくても、例えば10年間で全額返済してしまうという方法もあります。
しかし、返済期間が短いということは、それだけ毎月の返済金額が大きいということでもあります。また、いくら貯金があったとしても全てを家の購入に投入するわけにもいきません。
こういう場合でも、リレー返済をすると支払期間が長くなるため毎月の返済金額を減らすことができます。あまり金利が高いと無理してでも早く返済した方が良いのですが、低金利の間は返済期間を長くするのも手です。
親子リレー返済のデメリット
メリットは色々ありましたが、デメリットはどうでしょうか。
もちろん良い事ばかりだけではありません。とても大きなデメリットがあります。
完済までは子供が別の住宅ローンを組むことができなくなる
まずは最大のデメリットです。
リレー返済というのは、親から子へ借金がスライドする仕組みです。つまり、全て返済するまでは親も子も住宅ローンを組んでいる状態です。
普通の年収の人の場合、複数の住宅ローンを組むというのはとても困難です。例えば、二世帯住宅を建てて親が10年返済して、その後子供が25年間の返済を引き継いでいるケースはよくあります。
この時に、なんらかの事情で子供が別のマンションを買いたいと思ったらどうなるのでしょうか。
言うまでもなく、25年ローンを抱えている人に新しく住宅ローンは組ませてもらえません。まずはリレー返済を終えてからでないと次の住宅ローンが組めないのです。
リレー返済が必要な状況なら固定金利にすべき
さて、住宅ローンは大きく分けて変動金利と固定金利があります。
短期金利によって金利が変動していく変動金利と、一度契約すれば金利が固定される固定金利です。これはリレー返済でも同じなので、どちらにするかを選ぶことになります。
さて、リレー返済の場合はどちらにするべきなのでしょうか。
個人的には、リレー返済が必要な状態であれば固定金利にすべきだと思っています。
リレー返済を使う場合には、おそらくローンの期間は35年になると思います。そもそも短期間で返済できるならリレーの必要がありませんからね。
変動金利は低金利なのでお得なのは間違いないのですが、35年となるとリスクも大きくなってきます。
実際には20年で返済できるけど低金利だし35年にしておく・・・という場合には変動金利でもイザという時に対応できるので良いと思いますが、35年が必要な状況だと話は違います。
長期間ローンを返済していくことが明らかな場合には、やはり固定金利にしておくことをオススメします。
フラット35でリレー返済する場合
それでは具体的にフラット35でリレー返済をする場合です。
フラット35の場合はリレー返済する時の条件は下記の通りです。
次のすべての要件にあてはまる方を後継者としていただく場合は、満70歳以上の方でもお申込みいただくことができます。
また、お申し込みご本人の年齢にかかわらず、後継者のお申し込み時の年齢を基にお借入期間をお選びいただけます。【親子リレー返済の後継者の要件(次の1から3までのすべての要件にあてはまる方】
- お申し込みご本人の子・孫等(お申し込みご本人の直系卑属)またはその配偶者で定期的収入のある方
- お申し込み時の年齢が満70歳未満の方
- 連帯債務者になることができる方(1名のみとなります。)
既に説明した通り、後継者である子供の年齢を元にして住宅ローンを組むことができるので、高齢でも35年のフラットを契約することができるのです。
フラット35の場合は、親子リレー返済の場合でも金利は据え置きです。
例えば2015年7月だと35年で年利1.61%になります(当初10年は-0.6%の優遇あり)。
親子リレー返済でも特にデメリットがないのは嬉しいですね。
民間銀行でリレー返済する場合
民間の銀行でもリレー返済に対応している銀行はあります。
条件は銀行によって少しずつ違いますが、基本的にはフラット35と同じです。
主な銀行の35年間住宅ローンの固定金利コースは下記の通りです(2015年7月)。
銀行 | 金利 |
三菱東京UFJ | 1.91% |
三井住友銀行 | 2.32% |
みずほ銀行 | 2.07% |
フラット35との違いは団体信用生命保険が無料で付帯していることでしょうか。
リレー返済は金利の安いネット銀行では基本的には対応していない(ペアローンになる)ようなので、メガバンクで契約することになりそうです。
フラット35と民間銀行どちらにすべきか?
それではリレー返済の場合はどちらにすべきなのでしょうか。
まずは金利で比較してみましょう。
二世帯住宅を建てるのに35年間で5000万円のローンを組む場合で考えてみましょう。
フラット35は金利と手数料が最も安い「優良住宅ローン」で契約することにします。金利は2015年7月の1.61%。当初10年は金利優遇-0.6%が受けられる前提とします。
民間銀行はメガバンクの中で金利が一番安い三菱東京UFJ銀行にします。金利は1.91%です。
手数料等は、事務手数料と保証料です。印紙税や司法書士報酬などは登録免許税など大きな差がないものは省略しています。
借入先 | フラット35 | 三菱東京UFJ |
月々返済額 1-10年 |
141,375円 | 163,331円 |
月々返済額 11-35年 |
151,792円 | 163,331円 |
手数料等 概算 |
250,000円 | 1,300,000円 |
総支払額 | 62,752,549円 | 69,628,928円 |
はい、フラット35の方が700万円近く安く済むことが分かりました。
700万というと高級車が買えてしまうレベルですね。これだけ差があるとフラット35にしたくなります。
しかし、忘れてはいけないのが団体信用生命保険です。フラット35は団信は別料金がかかります。団信は金利に換算すると0.3%くらいになるので、団信を含めて計算してみると400万くらいの差になります。
結果として、団信を含めてもフラット35の方が400万円近くお得です。
フラット35を契約するのにおすすめの金融機関
フラット35を契約する場合、手数料だけ見ると「優良住宅ローン」が一番です。
一方で、総合的に見ると「住信SBIネット銀行のフラット35」をオススメします。
手数料は1.0%なので最安値とは言えませんが、それ以上に大きなメリットがあります。
それは、病気で働けなくなった時に、ローンの支払いがなくなるオプションがあることです(料金は3000万円ローンの時で約16万円)。
もちろん、同じようなオプションは他の銀行でも加入することができます。しかし料金が全然違うのです。他の銀行だと約80万円~100万円かかります。
つまり、「住信SBIネット銀行のフラット35」だと100万円近くお得になると言うことです。また、普通にがん保険や医療保険に入る要理も圧倒的に安いです。
これだけの差があると「住信SBIネット銀行のフラット35」をオススメするしかないわけですね。
リレー返済をする場合には高齢でのローンになることも多いので、そうなると病気への対策ができるのは大きなメリットです。
まとめ
それではまとめです。
- 親子リレー返済を使うと高齢でもローンが組める
- 完済までは子供がローンを組めないので注意
- リレー返済する時は固定金利がおすすめ
- フラット35と民間銀行だとフラット35の方が数百万お得
- フラット35なら「住信SBIネット銀行のフラット35」がおすすめ
低金利の今だからこそ検討しやすい親子リレー返済。
長期間のローンになるのでじっくりと検討しましょう。